国富町クリーンセンターの取り組みについて
家畜排せつ物と生ごみの堆肥化(宮崎県国富町)
1 経過
本町は、宮崎県のほぼ中央部で宮崎市から北西へ約16kmに位置し、面積は130.63km2である。気候は年間を通じて温暖で、降水量も多く、日照時間も長いという農業において極めて適した条件にあり、平成26年度の農業粗生産額は年間約80億円となっている。
昭和50年代、本町は4町で結成する1部事務組合で、家庭系一般廃棄物を処理していた。
当時、ごみ処理に多額の費用を要しており、生ごみの持つ水分が起因していると考えられていた。
これと同時期、畜産経営農家には生活環境を同じくすることによる混住化問題、専業化による多頭飼育化が引き起こす排泄物の処理の問題が浮上していた。
これらの問題を同時に解決するため、独自に畜糞と生ごみを合わせて堆肥化する施設を建設する計画となった。
人口.........19,673人(平成27年10月1日現住人口)
世帯数......7,795戸
耕地面積......2,530ha(平成25~26年農林水産統計年報)
2 施設の概要
(旧施設)
(1)事業名......昭和59~60年 県営畜産経営環境整備事業
事業費......370,415千円(国庫支出33.3%、県費補助金21.7%、町費45.0%)
完成......昭和60年5月
規模......24.6t、建築面積1,199m2
主原料:豚糞・牛糞・鶏糞・生ごみ
(更新施設)
(2)事業名......平成7年度地域農業基盤確立農業構造改善事業(平成8年度繰越事業)
事業費......435,300千円(国庫補助1/2、町費負担金1/2)
完成.........平成9年3月
規模.........53.9t(うち豚尿3.1t)、建築面積2,995m2
主原料:豚糞・牛糞・鶏糞・生ごみ
(再更新施設)
(3)事業名......平成24年度畜産環境総合整備事業(平成25年度繰越事業)
事業費......316,626千円(国庫補助1/2、町費負担1/2)
完成.........平成26年2月
規模.........44.4t(1日当たり処理能力は従前と変わらず)、建築面積2,998m2
主原料:豚糞・牛糞・鶏糞・生ごみ
3 施設の目的
畜産経営農家から排出される家畜排せつ物と一般家庭から出される生ごみを、一定の割合で混ぜ合わせ衛生的に堆肥化処理を行い、できた製品を町内の農地等に還元する。
4 原材料収集と製品販売価格
生ごみの分別収集......一般ごみとして各家庭から週2回全地区を対象とし回収する。
町指定の袋(生分解性プラスティック製:10袋190円)を使用。
畜糞の収集...............町内の希望農家と年間契約をし、収集する。
契約農家(牛38戸、豚5戸、ブロイラー5戸)
堆肥販売価格............製品バラ 3,240円/t、袋詰め 216円/15kg
堆肥の成分...............窒素1.9% リン酸2.8% カリ2.3% 水分30.9%
(平成26年8月計量検査)
5 処理量及び製品製造量
平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | ||||||
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原 料 |
牛糞 | 5,534t | 53.7% | 6,017t | 57.3% | 2,767t | 55.5% | 3,839t | 54.4% |
豚糞 | 1,385t | 15.0% | 1,258t | 14.4% | 841t | 16.9% | 805t | 11.4% | |
鶏糞 | 1,553t | 15.5% | 1,445t | 16.1% | 700t | 14.0% | 1,446t | 20.5% | |
生ごみ | 1,177t | 15.8% | 1,157t | 12.2% | 676t | 13.6% | 966t | 13.7% | |
合計 | 9,649t | 100.0% | 9,877t | 100.0% | 4,984t | 100.0% | 7,056t | 100.0% | |
製品製造量 | 3,166t | 3,255t | 1,370t | 1,895t | |||||
販売量 | 3,103t | 3,156t | 1,908t | 1,684t | |||||
販売額(1) | 12,845千円 | 13,005千円 | 7,799千円 | 7,595千円 | |||||
クリーンセンター費(2) | 60,428千円 | 62,025千円 | 54,877千円 | 57,056千円 | |||||
補填分(1)-(2) | 47,583千円 | 49,020千円 | 47,078千円 | 49,461千円 |
6 管理運営
直営と委託......現場委託(工場2名、原料収集運搬3名、事務1名)
必要素材(3tダンプ3台、3tバキューム1台、小型タイヤショベル3台)
平成26年度のクリーセンター費(2)の内訳
57,056千円......需要費 11,486千円
役務費 377千円
委託料 45,188千円
その他 5千円
7 処理の流れ
畜産農家から収集された畜糞及び各家庭から排出された生ごみを原料棟に搬入し、一時堆積保管後、ホイルローダーにより調整し混合ホッパーに投入する。
その後、ベルトコンベアーで混合原料一次貯留棟へ送る。混合原料は、一時貯留棟から発酵棟、そして養生棟へ移動するが、すべてホイルローダーで運搬する。発酵棟ではロータリー式攪拌機により1日2回の攪拌を20日間程度行い、その間発酵が進むように曝気ブロアで床面から空気を送る。
養生棟へ移した後は、ショベルローダーにより3日に1回の頻度で切り返しを行ない、この間も曝気ブロアで送気する。金属類やビニール等の除去後、製品として出荷する。
8 悪臭対策
一次発酵棟においては、発酵のためアンモニアガスを主流とする悪臭が発生するが、臭気はビニールシートで覆い外へ出にくい仕組みとなっており、ブロアで強制的に吸引され、洗浄装置で調温とほこりの除去を行った後、微生物脱臭槽へ送気される。
微生物脱臭槽は、ゼオライト鉱石を床にして、アンモニアを分解する微生物が繁殖し、臭気は分解され大気開放される。したがって、施設から排出されるアンモニア成分は5ppm 以下となっている。
※ ゼオライト鉱石......多孔質性状で、臭気の吸着作用もある。
9 流通販売について
以前は、直接販売をしていたが、畜産農家と耕種農家との連携を密にし、計画的な生産と流通の促進を図るため、JA及び町内肥料販売店、各種農家代表、普及センターをはじめ、県の関係機関、町で構成する国富堆きゅう肥銀行を設立し、販売を開始した。
(1)国富堆きゅう肥銀行の設立(平成10年10月)
事業費 1,528千円(町単:平成26年度実績)
事務局 JA宮崎中央国富支店生産資材課
(2)事業内容
- 町から堆肥を仕入れ、各販売店に注文と販売(運搬は別)
- 各販売店に販売促進費を給付 1袋 54円、 1トン 590円
- 堆肥代のとりまとめと一括納入
10 クリーンセンター運営に伴う効果
(1)畜産環境の保全と振興
(2)生ごみの有効利用とごみ処理の効率化
(3)農業の基本である土づくりに貢献
(4)焼却施設の負担軽減
11 堆肥の評価について
製品は1種類であるが、成分的にバランスがよく町民に広く利用され好評である。
12 製品製造について
原料をバランスよく配合することにより、十分な発酵温度(70℃)と良好な発行状況を保つことができる。
13 施設について
開放型の施設であるため、製品熟度及び水分の状況が常時察知できるので対応がしやすい。
また、熟度に応じた日数調整も可能である。
14 問題点と対策
生ごみの中にビニールが一部混入してくる問題があるが、町民へ「生ごみ分別排出」に対するお願いと、残渣分別機により処理している。
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